Q12. 測定する時間は、何分が適切なの? 装置の最適化について

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ほとんどのESR装置は、マイクロ波の周波数を一定に保って、外部磁場を掃引して信号を記録します。ESRの測定時間に最も影響を及ぼすのは、磁場掃引の時間(掃引時間)です。磁場の掃引時間は短い方が測定時間は短縮できます。しかし、掃引時間が短すぎる、つまり磁場の掃引速度が速すぎるとESR装置とESR信号に悪影響を及ぼします。

 まず、磁場掃引速度が速すぎると、ESRの電磁石の励磁電源に大きな負荷を与えます。多くのESR装置には磁場掃引速度の上限値が設定されていて、電源が保護されています。

 次に、磁場掃引速度が速すぎるとESR装置の時定数が磁場の変化に追従できなくなって、ESR線形が崩れてしまいます。たとえば、ESR装置の時定数を1秒に設定した状態では、刻々得られる信号を1秒ごとに平均してESR信号を記録しています。この状態で測定磁場領域を1秒で掃引すると、あきらかに磁場掃引が速すぎて本来のESR線形が得られません。ESRスペクトルのS/Nが低くて時定数を0.3秒以上に設定する場合は、ESRの線形と掃引磁場幅にもよりますが、目安として少なくとも2分から4分以上の掃引時間が必要になります。

標準サンプルとしてg値決定などに使われれるDPPHラジカルのESRスペクトル: 一番上 (80秒) が正しいスペクトルだが、掃引時間が速い (下) と線型が崩れていく。