Q14. ラジカルとは何ですか?
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ESR50Qs
ラジカルという言葉は社会や政治の世界で「急進的」や「過激的」という意味合いで使われる言葉としてよく使われています。物理学、化学、生物学の各分野でもラジカルという言葉が科学用語として頻繁に用いられています。私達の身の回りの物質を構成する原子や分子軌道は通常は軌道上に対になって二個の電子から構成されていますが、一部には対にならずに軌道上に一個の電子しか持たない物質が存在します。この電子のことを不対電子といって、不対電子を持つ原子、分子、イオンのことをラジカル(フリーラジカルとも言います)と言います。
このラジカルは物質全体の中に占める割合はすくないのですが、特別な反応性を示し、半導体・メモリ・電池などをはじめとする各種の新素材の合成・開発、新しい医薬品などの合成反応に非常に重要です。また、金属錯体や生体中のヘモグロビンなどの金属タンパク質などの遷移金属の多くが不対電子を持っているものがあります。さらには生体の白血球や血管の細胞などではラジカルの一種でスーパーオキサイドや一酸化窒素を生成する細胞群があり、通常は殺菌や血流の正常な機能調節に必須です。しかし、ひとたびこれらの細胞が暴走するとがん、心臓血管疾患や各種の生活習慣病の原因となってしまいます。また、放射線の生体障害にも水由来のラジカルの細胞障害作用が関係しています。
このように各分野でラジカルは重要な役割が認められるようになってきていることから、近年では物理学、化学、工学、生物学、医学など多くの学問分野でラジカルの検出や性質を調べる研究が盛んになってきています。このラジカルの検出には電子スピン共鳴法(ESR)が特異的に検出・測定できる方法として重要な手法として用いられています。
