Q24. Mn2+ のシグナルが6本になるのはなぜ?

Category: ESR50Qs

 マンガン(Mn)原子は2価(2+)の場合に電子スピンを持ちます。また、Mnの原子核はスピン(核スピン)を持っています。電子スピン共鳴(ESR)測定の時にはMnの電子スピンに磁場を加え、電磁波の吸収を観測します。Mnの核スピンは、その電子スピンに磁場と同様な影響を与えます。磁場の方向に対する核スピンの向きに依存して、ESRが生じる磁場の値(共鳴磁場)が変化します。この効果によりESRの共鳴磁場が複数に分かれます。分かれる本数は核スピンの大きさ(I)で決まり、その数は(核スピンの大きさ)x 2 + 1 = 2I + 1で表せます。この数はスピンの多重度と呼ばれ、スピンの向きで可能な状態の数を表します。Mnの核スピンの大きさはI = 5/2であることが知られており、この場合の共鳴磁場は(5/2) x 2 + 1 = 6本に分かれます。このように核スピンが電子スピンに影響を与えることを超微細相互作用と呼びます。

 代表的なMn2+ の試料にESRマーカーとして用いられるMn/MgOの標準試料(Mnマーカー)が有ります(「ESR50のぎもん」Q23参照)。6本に分かれる共鳴磁場の間隔は、近似的には等間隔です。厳密には完全な等間隔ではなく、核スピンの向き(mI、核スピン量子数のz成分)の2乗に比例するずれが少し生じます。詳しくは下記の式で記述されます。

 Mn2+のESRの共鳴条件式。Hobsが観測される共鳴磁場となる。(日本電子株式会社「ESRの使い方」p.17より転載)