Q41. 量子計算機とESRの関係について

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 普段使うコンピュータ上では、0または1という2つの状態のどちらかだけで記述されるビットを組み合わせて全ての情報を形作ります。そのような情報を操作することで、情報の変換や演算を行っています。コンピュータの世界は、最小単位が0又は1のみで構成される2進数の世界で、0と1の中間などを考える余地は全くありません。一方、量子コンピュータは、“量子性”を利用して情報処理に活かそうとするものです。上述のビットに対応する情報の最小単位は、量子ビットと呼ばれ、0と1の中間(0と1の重ね合わせ)を思考の中に組み入れることが可能になります。量子ビットを組み合わせた量子状態を情報として利用し、重ね合わせ状態を積極的に活用することで、並列化など飛躍的な演算処理の高速化を図ろうとするものです。因数分解やデータ検索では桁数やデータ数が多くなればなるほど量子コンピュータの方が処理能力に優れていることが分かっています。

 ESRは磁場中でゼーマン分裂した電子スピンの上向きと下向きの2つの状態間で生じる共鳴現象を観測するものです。この電子スピンの2つの状態は、マイクロ波パルスを使うことにより重ね合わせ状態を作り出すことができます。複数の電子スピンを個別に扱うことができれば量子ビットの組み合わせとしても拡張できるため、電子スピンの量子状態を情報として実装できることになります。