近年、電子スピンの関与する学問領域は急速に拡大し、物質科学や生命科学の先端科学技術に至るまで多彩な分野に及んでいます。このことは、これまでの物理学会(磁気共鳴分科会)、ESR討論会、磁気共鳴医学会、日本フリーラジカル学会、In vivo ESR研究会、応用計測学会などの活発な研究活動と共に、物理、地球科学・年代測定、応用磁気科学・工学、バイオイメージング科学、分子科学、分子磁性科学、量子スピン科学・工学、錯体化学、光化学、高分子化学、放射線化学、環境科学・工学、触媒化学、生化学、医学、薬学、食品化学、農学、新物質科学等々の内外の学会において、電子スピンに関わる研究発表が増大していることからも明らかです。このような背景のもとに、それぞれの専門領域における細分化と高度化が進展する一方、領域の新たな発展をはかるために、電子スピンを軸とする科学を推進する機運が高まっています。従来の科学・技術の領域の枠にとらわれず、電子スピンをキーワードとした科学者・技術者の研究技術の交流と情報交換・発信の場のみならず、次世代研究者・技術者の活躍を積極的に支援する場を新たに設立することは、21世紀の科学技術の課題を多様な視点から解明するために重要であると考えます。

今日では、日本独自の研究技術の成果を世界に向けて発信する活動を一段と強化することが重要な課題となっています。また、アジアにおける科学技術の進歩に対する日本の役割も重要性を増しています。新しい学会は、日本における国際シンポジウム・研究会の開催や独自性の高い国際的な専門学術雑誌の発刊など、国際的な学会活動を積極的に開拓することによって、関連研究分野の国際的な発展に寄与したいと考えています。

電子スピンをキーワードとする科学やテクノロジーを「電子スピンサイエンス」とよび、日本における関連研究分野の一層の発展をはかり、次世代研究者・技術者の育成、国際的な学会活動の展開をはかることを目指して、電子スピンサイエンス学会(The Society of Electron Spin Science and Technology:略称SEST)を設立することを呼びかけます。

2002年10月吉日 電子スピンサイエンス学会(SEST)発起人一同