Q01. 電子スピン共鳴装置ってどんなものですか?

Category: ESR50Qs

電子スピン共鳴分光(Electron Spin Resonance Spectroscopy: ESR)を行う装置をESR分光器(スペクトロメーター)と呼んでいます。一般に「分光する」とは、光や電波(電磁波ともいう)の波長と強度の関係を調べることを言います。(重さを分ける場合は、spectrometry:計量術という別の言葉になります)。光や電磁波を物質(試料)に照射すると、光(電磁波)は物質に吸収されたり、物質から反射されたりしますが、これが物質の性質を反映した情報をもっています。
ESR測定では、磁性(スピン、磁気モーメント:正確には常磁性物質)を持つ試料に、電磁石などを用いて磁場を加えます。それと同時に電磁波を照射し、試料が電磁波を吸収する様子(電子スピン共鳴現象)を観測します。
ESRの場合は、通常マイクロ波とよばれる波長3cm程度の電磁波を使いますが、Q2で述べるように光の分光法とは少し違います。光分光では、電磁波のもつ電場と物質の作用を観測しますが、ESRでは、電磁波の磁場成分(電磁石が与える磁場と区別するため、高周波磁場といいます)と物質の間の作用を観測する違いがあります。一般的なESR装置では、試料に与える電磁波の波長を固定して、試料に与えている電磁石磁場(静磁場)の強さをゆっくり変えながら測定して、いわゆる磁場スペクトルを得るのです。
図にESR装置の例を示します。マイクロ波を発振、受信するマイクロ波ユニット、試料に磁場を与える電磁石、試料をセットするとともに、試料位置でマイクロ波を共振(重ね合わせ)させ、試料位置での高周波磁場強度を高くするための試料共振器、感度を上げるために電磁石の静磁場強度を0.03% ほど上下させる磁場変調装置、電磁石などを水冷するための装置、位相同期回路や制御用の計算機などからなりたっています。