Q02. ESRと光吸収の分光とはどう違うの?

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ESRで用いられているのはマイクロ波ですが、マイクロ波も電磁波ですので、光の一種です。そのため、ESRも電子スピンがマイクロ波を吸収する現象を観測する光吸収分光の一種だと考える事が出来ます。しかし、周波数、波長が異なる事から次のような違いがあります。

1.光吸収が主に電磁波の内の振動する電場成分のエネルギーを物質が吸収するのに対して、磁気共鳴では電子スピンの磁気モーメントが電磁波の振動する磁場のエネルギーを吸収します。その為、ESRではマイクロ波の中の高周波磁場が最も強くなる部分にサンプルを設置して測定します(図参照)。しかし光の波長はマイクロ波と比べて非常に短いため、電場成分と磁場成分とを空間的に分ける事は困難です。

2.ESRではキャビティや共振器を用いて電磁波とサンプルとの相互作用を強めて、測定感度を上昇させています。光吸収でもミラーによるキャビティを用いた測定は可能ですが、さほど一般的ではありません。さらに、光吸収では単純に物質による光の強度の減衰を観測するのに対して、ESRでは電磁波の位相が90度ずれた成分を観測する検波法を用いて電磁波の吸収を観測する場合が多くあります。このような測定法は光のような振動数が高い電磁波においては技術的に難しくなります。しかし、近年では分光測定においても質の良いレーザ光を用いて、同様の測定が可能になりつつあります。