Q10. NMRとESRは何が違うの?

Category: ESR50Qs

NMRもESRも、磁気共鳴法と呼ばれる計測方法の仲間です。原理もほぼ同じですが、何が違うのでしょうか。

 NMRは「核」磁気共鳴法、ESRは「電子スピン」共鳴法と呼ばれているように、NMRでは原子核(核スピンをもつものに限ります)、ESRでは電子スピン(不対電子)を観測対象としています。電子スピンも核スピンも小さな磁石と例えられるように、磁性を持っており、その磁力は電子スピンの方が大分大きいです(例えば、水素原子核の核スピンと比べると約650倍大きい)。また、スピンをもつ電子や原子核を静磁場中に置くと、静磁場の磁場に反応してコマのような回転運動を始めます(歳差運動)。

 電子スピンは、核スピンよりも強い磁力をもつので、核スピンよりも静磁場の磁力に応答しやすいです。そのため、同じ静磁場強度下では、電子スピンのほうが核スピンよりも高速で歳差運動をします。磁気共鳴法では、歳差運動の周波数に対応した電磁波を使用してスピンの動きを観測するため、ESRではNMRよりも高い周波数の電磁波を使うことになります。以上のことから、一般的にESRではNMRよりも低磁場・高周波で測定が行われます。電磁波の周波数で比較すると、NMRで使用される周波数は数10 MHz~数100 MHzなのに対し、ESRでは数100 MHz~数10 GHzがよく使用されています。