Q11. ESRはそもそも何が測定できるの? 何が分かるの?

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ESR は、不対電子(電子スピン)の挙動を観測する測定手法であり、フリーラジカル(不対電子を含む物質)を直接的に検出できる唯一の計測手法です。電子スピンの挙動は、スピンが置かれた環境や、周囲の磁場、他の電子スピンや核スピンとの相互作用によって変化します。そのため、ESRで取得した信号を解析することで、その電子スピンがどんなラジカル種に含まれているのか、どれだけの量のラジカルが含まれているのか、物質中の電子スピンがどのような環境に置かれているのか、分子の形や方向といった構造、物質中にどのように電子が分布しているのかなどの情報を知ることができます。

 このように、ESRでは電子スピンを目印として多種多様な情報を取得できるので、多岐にわたる分野で応用されています。例えば、私たちの体の中にも活性酸素などのフリーラジカルが含まれています。そんなフリーラジカルの挙動をESRで調べることで、生体内の情報(酸素分圧など)やどんな反応が起きているのか、また疾患のメカニズムなどを調べることができます。そのほかにもESRで不対電子を観察することにより、電気材料や高分子材料など材料の磁気的な機能や、ラジカル発生が反応に関与するような触媒の活性、地質の年代、被ばく量なども知ることができます。