Q25. 塩に含まれるマンガン二価イオンはどんなESRスペクトルを示しますか?

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 食品のESR測定・解析を試みますと、塩(NaCl)を含む食品に共通するESR信号があると気付きました。まず、ESR装置には標準・基準サンプルとして酸化マグネシウム(MgO)で希釈したマンガン二価イオン(Mn2+)が常備されており、マーカーとして重宝にされています。これからみる含塩食品ではMn2+はNaCl中の信号として見ることです。市販のESR装置は一般にX-バンド帯域を計測するため、NaCl中のMn2+は特有のスペクトルパターンを与えます。NaClの格子欠陥と周波数特性が絡んでいます。他の帯域(Q-バンド等)では、特殊性はありません。

 図は、梅干のESRスペクトルです。このように微分形では、両サイドがよりブロードな歪のある5本線の信号を示しますが、積分形では5本線は等強度です。すなわち、 Mn2+を計測しています。両端にもう一本隠れているバナジウムの信号ではありません。g値、線間隔ともMgO中のMn2+と同じ数値を示します。図に示すように、美味しい良質の梅干はセンター部位にフリーラジカルさえ示しません。赤真布ノリや多くの海藻類も同様のパターンを示します。もちろん、岩塩はMn2+の宝庫です。お茶もMn2+を多く含みます。これを30倍位NaClで希釈すれば、図に示すパターンが得られます。食品には、他に鉄三価イオン、銅二価イオン、クロム三価イオン等のESR信号を与えることはもちろんですし、固有のフリーラジカルを個別に観測できる楽しみもあります。