Q29. 寿命が短いラジカルをESRで測定するにはどうしたらいいの?

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 不対電子を持つ活性酸素種のような化学種(フリーラジカル)は不安定な状態をとり短時間で消滅することが多く、ESRで精度良く検出するには特殊な技術を必要とします。

 1つの方法としては、不安定なラジカルを捕捉(トラップ)するスピントラップ剤を用いて比較的安定なラジカル種に変換してESRを検出するもので、スピントラップ法と呼ばれます。一般的なスピントラップ剤としてDMPOがあり、スーパーオキシドラジカルO2·-やヒドロキシルラジカルHO·を区別して検出することが可能です。ただしこの方法は、スピントラップ剤の短寿命フリーラジカルとの酸化反応生成物として生じる安定ラジカル(スピンアダクト)を検出している間接的なものです。

 より直接的にラジカルを検出する方法として、測定対象が液体の場合、反応溶液系を高速でESR測定装置に流入させ、短寿命のラジカルを検出する高速流通法があります。時間に関する検出性能(時間分解能)を高めたESR装置を必要としますが、定量性に優れた計測が可能となってきました。一方、フリーラジカルの消滅に寄与する反応を止めることによって短寿命フリーラジカルの検出を行う方法として凍結法があります。これは液体窒素によって、瞬時に凍結溶液を生成し、固体ESRとしてESRスペクトル解析を行うものです。いずれの方法も長所短所があり、現在も多くの研究者がラジカル反応の分子機構を解明するために、より精度良く短寿命フリーラジカルを検出できる方法の開発に取り組んでいます。