Q30. ESRスペクトルからラジカル(分子)の構造決定ができるのはなぜ?

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 本来ESRスペクトルは一つの不対電子を検出すると1本のスペクトル線を示します。これではラジカル分子の構造はわかりませんが不対電子(ラジカル)の近くに水素核や窒素核などがある場合、もともと1本だったスペクトル線は周囲の構造を反映した、超微細分裂とよばれる特徴的な分裂をするようになります。それは、水素核や窒素核が小さな磁石としての性質をもつためです。その様子を詳しく調べることにより、構造についての手掛かりを得ることができます。

 Q6の話で、ESRスペクトルが、磁場の中におかれた常磁性の物質のエネルギー準位のゼーマン分裂をもとに観測されることを学びました。外部磁場によって分裂したエネルギーは、たとえば水素核が不対電子の近くにあるとさらに2本に分裂します。その結果スペクトル線は1:1の強度の2本にわかれて現れます。窒素核が近くにあれば1:1:1の等価な3本線に分裂します。この分裂の本数や別れ方を詳しく調べることによって、不対電子の近くに存在する水素核、窒素核などの種類や数を知ることができます。

 下の図は溶液中で観測したイソブチロニトリルラジカルのスペクトルで、等価な6つの水素核によって1:6:15:20:15:6:1の7本線に分かれ、そのそれぞれが窒素核によってさらに1:1:1の3本に分かれています。このことから図に示すような構造のラジカルであることがわかります。