Q31. ラジカルの定量を行うにはどうしたらいいの?

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 ラジカルとはどのような物質でしょう?化学の分野では、不対電子(1つの電子軌道のなかでペアになっていない電子)をもつ原子、分子、またはイオンをラジカル(または遊離基)といいます。医学・薬学の分野では生体に関連するラジカルをフリーラジカルとよぶことがあり、また、不対電子を持つことにとらわれず、反応性が高く短寿命の中間化学種の総称という広い定義もあります。ESR法は、ラジカルのような常磁性物質を直接検出できる唯一の分析法ですが、常温・常圧ですべてのラジカルを検出することはできません。

 たとえば、生体で生成する幾つかの活性酸素はフリーラジカルですが、市販のX-バンドESR装置では測れないほど低濃度で反応寿命が短いものです。そのため、試験管内で酵素反応や光増感反応などを利用して活性酸素を発生させ、安定化した後に定性・定量分析を行います。

 ESR法を用いた代表的な定性・定量分析法には、スピントラップ法があります。不安定なフリーラジカルを安定にするための試薬(スピントラップ剤)によって寿命を長くし、常温・常圧でX-バンドESR計測が可能になります(下図)。ESR信号波形からラジカルの定性的な情報を取得し、ESR信号面積や線幅が等しい場合はESR信号強度からラジカルの定量的な情報を解析できます。