Q34. ポテトチップの過酸化ラジカル

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 皆さん、ポテトチップなど油で揚げたお菓子は好きですか?ポテトチップはカロリーが高いので、非常食などにはいいとされていますが、食べすぎには気をつけましょう。

 さて、このような油で揚げたお菓子は、空気にさらすと、油がだんだん酸化します。酸素に触れて酸化物になるわけで、このような状態を過酸化物といい、特にアルキル基(炭化水素の集団)をR、酸素をOとしてROO·の形をしたものを過酸化ラジカルと呼びます。多くの有機物質[RH:アルキル基-水素]の反応は、酸化反応でRH+OH· → R·+H2Oのように有機物質[RH]から水素が奪われます。生成された有機遊離基R·は、酸素があるとROO·をつくるのです。お菓子の袋は窒素ガスで充填してありますが、これは油の酸化を防ぐためでもあります

 過酸化ラジカルはESRによって測定できます。油で揚げたものの破片を試料管に入れて、ESRで測定すると、時間とともに過酸化ラジカルの信号が大きくなっていくことがわかります。逆にたどれば、何日前に開封したものかもわかるわけです。一種のESR年代測定ですね。ここでは温度に依存する酸化反応を、時間をおいてみているわけです。同様に自動車の潤滑油(エンジンオイル)なども使用時間とともに過酸化ラジカルが蓄積していきます。

 もっとも最近のお菓子では、抗酸化剤の添加がすすんで、過酸化ラジカルの生成が抑えられる傾向にあります。いわゆるビタミンCなどに代表される抗酸化剤は、お茶のペットボトルを含め、さまざまなものに加えられています。