Q35. ESRイメージング(生体)について概説してください

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 不対電子の空間的な分布を見えるようにするのがESRイメージングです。不対電子を持つ分子が生き物の体の中にあれば、原理的にはそれらを画像化できそうですが、実際には、測定装置の感度に限界があるため、生き物が体の中で自然に作り出す不対電子を持つ分子の測定は簡単にはできません。そこで、マウスなどの小動物に不対電子を持つ分子(プローブ)を投与することにより、プローブの不対電子を利用して、ESRイメージングが行われます。プローブの特性により体の中の特定の情報を画像化することができます。具体的には、生体組織でのプローブの分布、酸素分圧、pH、酸化還元状態など、目では見えない情報を画像として見ることができます。

 ESRイメージングは、不対電子(電子スピン)を検出しますが、核磁気共鳴(NMR)は原子核を検出することができます。磁気共鳴現象を用いた画像化法で最も広く普及しているのが病院で用いられている磁気共鳴イメージング(MRI)です。水素の原子核(核スピン)の情報を画像化することにより、体の中の様子を見ることができます。ESRイメージングは、体の中の形を画像化することはできませんが、MRIや他の方法では測定が難しい情報を測定することができます。