Q38. 気体を測定するにはどうしたらいいの?

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 ESR測定では、しばしば大気中の酸素分子の信号が観測されることがあります。ESRキャビティーに窒素置換をせずに、300から1000 mT程度の広範囲でESR信号を記録すると、ベースラインが大きくドリフトして、とてもブロードなESR信号が観測されます。この信号はESRキャビティーに窒素置換を行うと完全に消失します。つまり、このESR信号は2個の不対電子有する大気中の酸素分子に由来することがわかります。ESRのテキストにはキャビティーを窒素置換する必要性が説明されているのはこのためです。

 気相の酸素を10 Pa程度に減圧し、室温でESRを300から950 mTの範囲で記録すると、多数の鋭いESR信号が観測されます。これが気相の酸素分子本来のESR信号で、酸素の振動、回転などの準位によってこのように多数の分裂が生じます。気相の常磁性種について、分解能のよいESRスペクトルを観測するには、減圧下でサンプリングする必要があります。