Q39. パルスESRとはどんなものですか
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ESR50Qs
ESR法を用いれば、物質に含まれる電子スピンがどの様な振動数の電磁波(マイクロ波)と共鳴し、エネルギーを吸収するかを調べることが出来ます。ある特定の振動数をもつマイクロ波を連続的に照射しながら、物質がどのような条件の下でそのマイクロ波を吸収するかを調べる方法と、いろいろな振動数成分を含むマイクロ波を照射してその中からどのようなマイクロ波を吸収したのかを区別する方法の2つが考えられます。
前者は、一定のマイクロ波に対して静磁場の大きさを変えながら共鳴条件を探す方法(連続法)です。これは、マイクロ波を楽器の一つの音に見立てると、音を一つずつ確認しながら、音程が外れた音の原因を探る作業に似ています。
後者は、一斉に鳴らしたいろいろな音を聴き、その中にどのような音が含まれているかを一度で聞き分ける(区別する)方法に似ています。ある限られた時間だけ発生させた強いマイクロ波のパルス波を用いれば、マイクロ波周波数を中心にパルス幅の逆数程度の広がりを持つマイクロ波を照射することができるため、マイクロ波パルス照射により吸収される電磁波は、パルス照射後の電子スピンの応答を時間軸のスペクトルとして観測できます。このようにマイクロ波パルスを用いる方法をパルスESRと言います。フーリエ変換といわれる数学的な手法を用いれば、電子スピンの時間応答を周波数で分割することができるのでフーリエ変換ESRとも言われています。