Q42. 研究以外の場面で、ESRは利用されていますか

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 製品の品質管理に利用されます。例えば、発酵酒は保管中に酸化反応による劣化を起こすことが知られおり、酸素の存在下では一定期間後に活性酸素種の生成が顕著となり、風味や香味に影響を与えます。植物油の酸敗臭は不飽和脂肪酸の酸化が原因で起こり、製品の風味に影響します。ESRは、ビールの香味安定性評価や油の酸化の評価に用いられています。ESRによる評価の結果を参考にすることで、適切な保存方法や加工方法の最適化を検討することができます。

 また製品の劣化は、ラジカルや遷移金属が関係することがあります。ESRを用いることで、その劣化に関係するラジカルの経時変化を把握することが可能です。例えば、塗料は光や熱などの刺激を受けると塗料を構成する分子構造が変化し、劣化が進行します。その際、分子結合が切れてラジカルが発生します。この発生したラジカルを ESR にて観測することで劣化の評価をすることができます。一般的に、屋外曝露試験は塗膜の寿命を決定するのに適した方法ですが、塗膜によっては長い時間が必要なことに加え、気候条件の変動などにより一定の曝露条件が得られないことがあります。そのため、劣化現象を短時間で再現し、ESR により評価することで塗料の開発に貢献できる可能性があります。

 その他に、製品の滅菌を行う過程でラジカルが生じることもよくあります。ESRにより、滅菌済みの製品の安定性や、そのラジカルの特性を評価することが可能です。