Q45. 活性酸素とは

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 「活性酸素種」は英語で「reactive oxygen species略してROS」と呼ばれます。これの言葉は1990年代から頻繁に使用されるようになりました。今では「酸素に由来する、体によくない化学種」として広く通用しています。

 我々のような好気性生物にとって酸素分子は必要ですが、酸素からエネルギーを獲得する過程(代謝)で副産される「体によくない」化学種が「活性酸素種」です。下図に示したのは、酸素から水に至る4電子4プロトン酸化還元反応を整理したもので、縦軸は電子の授受、横軸はプロトンの授受に相当します。たとえば、酸素が2電子2プロトン還元されると過酸化水素に到達します。ここで、過酸化水素の酸化数は「H2O」を差し引いても変化しないので、過酸化水素を水と酸素原子(H2O2 = H2O + O)と見なしています。そして、酸素原子から水に至る2電子、2プロトン酸化還元反応を続けると酸素から水に至るスキームが完成します。

 このスキームの破線で囲った領域に主要な「活性酸素種」が含まれています。まず、酸素の1電子還元種(O2)にはL. Pauling(ノーベル化学賞1954年、ノーベル平和賞1962年)によって特別な呼称「スーパーオキシドアニオンラジカル」が与えられています。酸素の代謝反応で副産されるO2は代表的な活性酸素種であり、炎症やがん化の遠因となります。次に、酸素原子の1電子、1プロトン還元種であるヒドロキシルラジカル(·OH)はほぼすべての有機物を素早く酸化する最強の反応性を備えた活性酸素種です。いずれの活性酸素もラジカル種ですから、両者はESR研究の対象になります。このほかにも、·OHの生成源となる過酸化水素や酸素の励起種である一重項酸素(1O2)も広い意味では活性酸素種に含まれます。