Q05. 電子スピンとは? 磁気モーメントとは? 不対電子とは?

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磁石同士が引き合う力を表すものを、磁気モーメントと呼びます。棒磁石などの大きな磁石は、原子や分子の小さな磁石の集まりです。電荷をもつ物質が運動すると、磁石の性質があらわれます。原子中の電子は原子核のまわりを運動しているので、公転運動*による磁場が発生します。さらに電子の自転運動*によっても磁場が発生します。これら電子の運動*によって、磁気モーメントが発生します。原子や分子内の磁気的な性質を調べれば、分子の結合や反応性、電流の流れやすさなどの物質の性質を知ることができます。

 電子の自転*のことを電子スピンと呼びます。分子中にはたくさんの電子がありますが、いつも磁石になっているわけではありません。これは、棒磁石のN極S極がくっつくと磁力を打ち消しあって安定になるように、電子もペアを作って磁力を打ち消しあい磁力が消えるからです。ところが、化学反応途中の物質や遷移金属など、なんらかの理由でスピンがペアにならず単独で電子軌道に入っている物質には磁力が発生します。この電子のことを不対電子と呼びます。ESRでは不対電子の磁気モーメントを検出して物質の性質を調べています。

(*スピンを自転に例えるのは古典力学的な説明です。量子力学的にみて、電子がコマのように自転しているわけではありません)。